所得税とは何か?税率や計算方法、控除の全貌を解説

税の基礎知識
この記事は約7分で読めます。

サラリーマンが得る給与、賃貸経営の家賃収入、銀行の利息などは「収入」と呼ばれます。その収入から必要経費を差し引いたものが「所得」です。所得は課税対象となるため、1年分の所得に基づいて税額を計算し納める必要があります。その税金こそが所得税です。

所得を対象とした税金のため、計算には様々な用語が使われ、税控除が適用されるかどうかで最終的な税額に影響します。何も知らずに税金を納めると、無駄な税負担をしてしまう可能性があります。ここでは、所得税の基本知識から控除の種類、節税方法を解説し、賢く納税するためのお手伝いをします。

所得税の基本を理解するには、まず所得の定義から確認しましょう。所得とは、収入から必要経費を引いたものです。その所得から基礎控除や配偶者控除を差し引いたものが「課税所得」です。課税所得は税金が課せられる対象で、その金額に基づいて税額が決まります。

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの課税所得に税率を掛けることで納税額を求めます。税率は超過累進税率方式を採用しており、所得に応じて税額が変動します。これは、経済的に余裕のある人から所得を再配分し、社会全体の公平性を保つための制度です。

課税所得金額を計算

所得税を計算する際には「課税所得×税率-控除額」という計算式を用います。まず課税所得がいくらになるのかを求めることが必要です。課税所得は、収入から必要経費や控除を差し引いた金額を指します。

課税所得金額を計算するには、まず1年間に得られた総収入を明らかにし、その収入を得るためにかかった手数料や通信費といった必要経費の合計を差し引きます。さらに、所得から所得控除を差し引きます。2020年以前の基礎控除は一律38万円でしたが、法改正により基礎控除額は所得に応じて決定されます。合計所得が2400万円以下の場合は48万円の控除が受けられますが、2500万円を超えると控除はなくなります。所得が多いほど、基礎控除額が減少し課税所得が増えることを理解しましょう。

所得税額を計算

1年間の総収入から必要経費を差し引いたものが1年の所得になり、そこから控除を差し引いて課税所得が決まります。課税所得が分かれば、対応する税率を掛け、控除額を差し引くことで所得税額を求めます。

たとえば、年間課税所得が300万円の人の場合、税率は10%で控除額は9万7,500円です。したがって、300万円の10%である30万円から9万7,500円を引いた20万2,500円が所得税額となります。

給与所得者の場合は「給与所得控除」

会社員や公務員など給与所得者には、給与の一部が必要経費として控除されます。これを給与所得控除と呼びます。計算式は次の通りです。

  • 給与所得金額=源泉徴収前の収入金額-給与所得控除額

収入金額には給料の他に残業代なども含まれますが、手当は含まれません。

2037年までは復興特別所得税も徴収

給与所得者は復興特別所得税も対象です。これは2011年の東日本大震災の復興に必要な財源を確保するために設けられた税金です。2013年に導入され、2037年まで徴収されます。税額は、所得税額から控除を差し引いた基準所得税額に2.1%を掛けて求めます。復興特別所得税は、源泉徴収時に所得税と一緒に徴収されるため、個別に納める必要はありません。

所得控除

  • 雑損控除:災害・盗難・横領などによる損害がある場合に適用
  • 医療費控除:医療費が一定額を超えた場合に適用
  • 社会保険料控除:社会保険料を支払った場合に適用
  • 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用
  • 生命保険料控除:生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に適用
  • 地震保険料控除:地震保険料を支払った場合に適用
  • 寄附金控除:国、地方公共団体、公益団体などに寄付した場合に適用
  • 障害者控除:納税者および同一生計の配偶者、扶養家族が障害者の場合に適用
  • 寡婦控除・寡夫控除:配偶者と離婚・死別し、生計を共にする子がいる場合に適用
  • 勤労学生控除:一定水準以下の給与所得がある学生に適用
  • 配偶者控除:年間所得が38万円以下(2020年以降は48万円以下)の配偶者がいる場合に適用
  • 配偶者特別控除:年間所得が38万円超〜123万円以下(2020年以降は48万円超〜133万円以下)の配偶者がいる場合に適用
  • 扶養控除:扶養する家族がいる場合に適用
  • 基礎控除:2020年以降、合計所得が2,500万円以下の納税者に適用

所得控除では、所得金額から一定額を差し引きます。所得控除の種類は14種類あり、基礎控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除などがあります。条件を満たすことで適用されますが、何もしなければ控除は適用されないため、証明書類を年末調整や確定申告で提示・添付する必要があります。

税額控除

  • 外国税額控除:外国で得た所得に対する外国所得税の控除
  • 政党等寄附金特別控除制度:政治活動への寄付を行った場合の控除
  • 認定NPO法人等寄附金特別控除:認定NPO法人等への寄付を行った場合の控除
  • 公益社団法人等寄附金特別控除:公益社団法人、公益財団法人、学校法人等への寄付を行った場合の控除
  • 住宅借入金等特別控除:住宅の新築・増改築で住宅ローンを組んだ場合の控除
  • 住宅耐震改修特別控除:住宅耐震改修をした場合の控除
  • 住宅特定改修特別税額控除:バリアフリー改修工事、省エネ改修工事、多世帯同居改修工事、耐久性向上改修工事を行った場合の控除
  • 配当控除:配当所得に対して10%または5%の控除

税額控除は、課税所得金額に税率を掛けて求めた所得税額から差し引かれる控除です。確定申告で初めて適用されます。税額控除は20種類あり、政党等寄附金特別控除制度、住宅特定改修特別税額控除などがあります。所得控除よりも直接税額から引けるため、節税効果が高いです。

事業にかかるお金は経費として計上する

多くの経費を計上することで課税所得を減らし、所得税を抑えられます。経費にはパソコンやプリンター、交通費、取引先との食事代など事業に関連する支出が含まれます。自宅で仕事をする個人事業主は家賃や光熱費の一部も経費にできます。プライベートと事業の区別が曖昧な場合は、時間や日数を基準に按分します。

所得控除・税額控除の申告を徹底する

税金の控除は税務署が自動で行うものではなく、納税者が申告する必要があります。所得税を抑えるための控除を利用するには、申告を怠らないようにしましょう。利用可能な控除については、国税庁のホームページや国税局の電話相談センター、窓口で確認しましょう。

損益通算・繰越控除を活用する

上場株式を保有し取引で損失があった場合、給与所得や事業所得と損失を合算できます。損失を合算すると課税所得が減少し、所得税額も抑えられます。このように利益と損失を相殺することを損益通算と言います。損益通算で控除しきれない場合は翌年以降に損失を繰り越すことができます。繰越控除は3年間継続でき、節税効果が大きいです。

青色申告で確定申告する

確定申告をする際には、青色申告を行うことで節税効果が期待できます。事業所得を得ている事業者が複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期日内に申告すると、55万円の特別控除が適用されます。さらに電子申告および電子帳簿保存を行うと、控除額は65万円に増加します。白色申告にはこの特別控除がありません。

源泉所得税との違いは?

源泉所得税は、給与や賞与の支払い時に天引きされる所得税です。納税を行うのは報酬を支払われる従業員ではなく企業であり、会社が支払う給与や賞与が対象です。天引きされる税額は、源泉徴収税表に基づいて計算されます。これは1年間の給与予想額から納税額を計算したもので、「みなし」で天引きされます。そのため誤差が生じることがあり、年末調整で正しい税額を求めて還付または追納を行います。一方、所得税は所得を得た本人が年に一度申告して納税します。給与や賞与以外の所得も含めて計算し、税額の調整は行いません。

住民税との違いは?

住民税も所得税と同様に給与から天引きされますが、違いがあります。まず納付先ですが、所得税は国税であり納付先は国です。一方、住民税は地方税であり、都道府県や市区町村といった地方自治体です。対象となる所得の時期も異なります。所得税はその年の所得が対象ですが、住民税は前年の所得が対象です。毎年6月頃に前年の所得に基づいて納税額が決定します。また、住民税には所得割と均等割の2種類があります。所得割は前年の所得金額に応じた課税方法で、均等割は全員が一定の税金を納める方法です。

この記事では、所得税の仕組みや計算方法、利用できる控除、納税額を抑える方法について解説しました。源泉所得税や住民税との違いについても触れ、理解を深めるための情報を提供しています。

ただし、掲載内容は変更される可能性があります。2020年に行われた改正で基礎控除額が大幅に減少したように、今後も法改正が行われる可能性があります。また、この記事で紹介した内容は基本的な事項に限られます。より深い知識が必要な場合は、税理士に相談するのが安心です。

理想の税理士を探すなら「税理士紹介をぶっ壊す」

  • 税理士紹介サイトに騙されたくない
  • 顧問料に応じた税務サービスを受けたい
  • 税理士の人となりを自分の目で見て選びたい

「税理士紹介をぶっ壊す」では、このようなご要望をお持ちの方のための税理士検索サービスを提供しております。

税理士紹介サイトの「闇」を知らずに税理士を探される方もいるでしょう。

当サービスでは、本当の意味で、あなたにとって理想の税理士に出会うことが可能です。無料で今すぐ検索できるので、お気軽にご利用ください。

タイトルとURLをコピーしました