傷病手当金と確定申告:医療費控除や扶養控除の関係を詳しく解説

個人確定申告
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この記事では、会社員が病気やケガをした際に申請できる傷病手当金について詳しく解説します。確定申告における課税対象の有無、医療費控除や扶養控除との関係性についても詳述します。また、傷病手当金を受給した場合に確定申告を行うことで還付金が得られるケースについても紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

傷病手当金とは?

傷病手当金は、健康保険に加入している会社員や公務員が病気やケガを理由に働けないときに支給される給付金です。この手当金は、1日あたりの支給額が対象者の標準報酬日額の3分の2に相当します。たとえば、標準報酬日額が9,000円の場合、1日あたり6,000円が傷病手当金として支給されることになります。

傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して最大で1年6ヵ月となります。したがって、支給期間中に体調が回復し職場に復帰した後に再度欠勤する場合も、この1年6ヵ月の間であれば傷病手当金の対象となります。

ただし、傷病手当金を受け取るためには、病気やケガによって3日間連続して会社を休む「待機期間」が必要です。また、健康保険に加入している会社員や公務員に限られ、国民健康保険に加入している個人事業主はこの制度を利用できない点に注意が必要です。

傷病手当金は確定申告が必要?

傷病手当金は非課税所得として扱われるため、原則として確定申告は不要です。具体的には、金額に関わらず、傷病手当金は所得税や復興特別所得税、住民税の課税対象とはなりません。

とはいえ、確定申告を行うことで、払いすぎた所得税が還付される可能性があります。たとえば、6月に病気になり傷病手当金を申請した後に会社を退職した場合、年末調整を行っていないため、源泉徴収された所得税の精算ができていない状況となります。

一般的に、会社が源泉徴収する税額は実際の納税額と一致しないことが多いため、確定申告を通じて払いすぎた税金が還付されることが期待できます。また、病気やケガの治療に伴って支払った医療費については、医療費控除を申請することで所得額から控除することが可能です。

つまり、傷病手当金は非課税であるため確定申告は不要ですが、申告を行うことで払いすぎた税金が還付される可能性があるのです。

傷病手当金の支給条件について、以下の4つのポイントに分けて詳しく解説します。

① 就労不能である

傷病手当金は、病気やケガにより働きたくても働けない状況にある場合に支給される給付金です。申請書には治療を担当する医師が記入する項目もあり、病気やケガの症状、経過状況、労働不能と認められる医学的な所見が求められます。

傷病手当金を申請する際は自己判断で行うのではなく、必ず医師の診断を受けてください。

② 仕事以外の事由による病気やケガ

傷病手当金は、仕事以外の理由で病気やケガをした際に申請できます。仕事中に発生したケガについては労災保険が適用され、治療費などは全額事業主が負担します。そのため、仕事中のケガは傷病手当金の対象外となるため、申請しないよう注意が必要です。

③ 給与の支払いがない

病気やケガで休んでいる期間中に会社から給与が支払われている場合、傷病手当金は支給されません。たとえば、有給休暇を取得している場合や労災保険からの支給を受けている際は、傷病手当金は対象外です。

④ 連続した3日間を含む4日以上就業ができない

傷病手当金は、連続した3日間を含む4日以上就業ができない状態が支給条件です。具体的には、病気で3日間連続して会社を休んだ場合、4日目以降から傷病手当金が支給されます。

傷病手当金の申請を行うには、まず連続して3日間会社を休む「待機期間」が必要です。この待機期間中は有給休暇を取得することも可能です。また、3日間連続で休んだ後に1日出社した場合でも、再度就業不能となった場合は傷病手当金の支給を受けることができます。

傷病手当金の申請書は、全国健康保険協会のWebサイトからダウンロード可能です。

参考:健康保険傷病手当金支給申請書(リンク

傷病手当金と医療費控除、扶養控除の関係について詳しく解説します。

傷病手当金と医療費控除の関係

病気やケガで支払った医療費が一定額を超える場合、確定申告時に医療費控除を申請することで、1年間の所得額から控除されます。所得額が減少すれば、納税額も抑えられるため、多額の医療費を支払った方は必ず確定申告を行いましょう。

医療費控除の計算方法は以下の通りです。

「1年間に支払った医療費-医療保険などの補填金額-10万円または所得金額の5%」=控除額

たとえば、1年間で医療費が50万円かかった場合、医療保険などから30万円の補填があったとすると、控除額は以下のようになります。

「50万円-30万円-10万円」=10万円

この控除額を所得額から引くことで、課税所得が減少し、結果として税金が軽減されます。

傷病手当金と扶養との関係

傷病手当金と所得税上の扶養、社会保険上の扶養との関係について詳しく見ていきましょう。

所得税上の扶養

家計を支える納税者にとって、配偶者や親、子どもなどの所得が一定額以下である場合、所得税の計算において扶養控除を受けることができます。扶養者が家計を支える納税者であり、扶養親族がその援助を受ける形となります。扶養親族の所得が48万円以下であれば、扶養控除の対象となります(扶養親族が給与収入のみであれば、その金額は103万円以下でなければなりません)。

なお、傷病手当金は非課税とされているため、所得税を計算する際にはこの金額を所得額から除外することができます。つまり、傷病手当金の支給を受けた場合、その金額は所得税の納税額に影響を与えません。

社会保険上の扶養

家計を支える納税者の第三親等以内に該当する配偶者や親、子ども、その他の親族などは、1年間の収入が一定額以下であれば社会保険の被扶養者として認められます。この被扶養者の資格を持つことで、扶養者と同様に健康保険や厚生年金保険などの社会保険への加入が可能となります。

しかし、被扶養者の1年間の収入が130万円を超えた場合、扶養から外れ、健康保険料や国民年金保険料などの負担が生じます。なお、この1年間の収入には給与所得や雑所得のほかに、傷病手当金の支給額も含まれます。

したがって、被扶養者の収入と傷病手当金の合計額が130万円を超えた場合は、扶養から外れるため、国民健康保険や国民年金への加入手続きを行う必要があります。

還付を受ける場合は確定申告が必要

傷病手当金を受給している期間中に医療費を支払っていたり、扶養控除の対象となっている場合は、確定申告を行うことで還付金を受け取ることが可能です。たとえば、医療費控除を申請することで所得が減り、納税額が抑えられます。

確定申告を行うことで還付金が得られる可能性があるため、該当する方は必ず申告を行いましょう。

傷病手当金を受給し、確定申告が必要なケースは以下の通りです。

  • 年末調整を行っていない
  • 会社を退職した
  • 還付申告を行う
  • 医療費控除を申請する

傷病手当金自体は非課税ですが、還付申告を行う場合や医療費控除を申請する際には確定申告を行うことで節税が可能です。また、会社を退職して年末調整を受けていない場合も、確定申告をすることで過剰に支払った税金が還付される可能性があります。

傷病手当金の受給期間中に退職した場合

傷病手当金の受給期間中に退職した場合について、退職後に再就職したケースとしなかったケースに分けて詳しく解説します。

退職後年内に再就職したケース

傷病手当金を申請した年に会社を退職し、他の会社に再就職した場合は、再就職先で年末調整を行うことになります。年末調整により所得税の支払額が確定し、もし払い過ぎていれば還付が受けられます。再就職先で年末調整を行う際には、以前勤めていた会社から必ず源泉徴収票を発行してもらうことが大切です。また、多額の医療費を支払った場合は、医療費控除を受けられるため、年末調整とは別に確定申告をすることをお勧めします。

退職後年内に再就職しなかったケース

傷病手当金を申請した年に会社を退職し、再就職しなかった場合には、確定申告を行うことで過剰に支払った税金が還付される可能性があります。さらに、退職後にアルバイトなどの収入や、ブログやSNSからの広告収入がある場合は確定申告が必要です。退職後に再就職をしないと年末調整はできませんので、確定申告を行い、所得税や復興特別所得税の納税額を申告してください。

病気やケガをした際に申請できる傷病手当金は非課税であり、確定申告の必要は原則ありません。しかし、医療費控除や払い過ぎた所得税がある場合には、確定申告を行うことで税金が還付されることになります。さらに、会社以外からの収入がある場合にも確定申告は必要となるため、早めに必要書類を準備し、申告を行うことが大切です。

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