この記事では、学生がアルバイトなどで得た給与に対して利用できる「勤労学生控除」について詳しく解説します。年末調整や確定申告を通じて申請する方法や、利用時のメリットとデメリットを紹介。学生ならではの税制優遇を賢く活用するために必要な知識をまとめました。最新の税制情報も含めて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
勤労学生控除とは
勤労学生控除は、学生が学校に通いながら働く場合に適用される税制上の優遇措置です。確定申告を通じて申請することで、所得税や住民税の金額を大幅に軽減できるため、経済的負担を減らす効果があります。本記事では、勤労学生控除の基本的な仕組みから、申請方法、要件、メリット・デメリットに至るまで、詳細に解説します。最新の税制改正に伴う重要な変更点も含めてお伝えします。
勤労学生控除の仕組み
勤労学生控除は、学生の税負担を軽減するために設けられた控除制度で、基礎控除や扶養控除、給与所得控除などと同様に、1年間の収入から差し引かれる控除です。これを利用することで、確定申告で申請した場合には、納めるべき所得税や住民税が大幅に減少する可能性があります。
控除額は以下の通りです：
- 所得税：27万円
- 住民税：26万円
この控除を受けるには、確定申告を通じて申請するほか、年末調整で申請することも可能です。年末調整の場合は、通常の給与所得控除や基礎控除に加え、勤労学生控除も適用されるため、税額が減額されます。
勤労学生控除を受けるための要件
勤労学生控除を適用するためには、いくつかの条件があります。これらの条件を満たしていないと控除を受けられないため、事前に確認することが重要です。
- 給与所得や事業所得など勤労による所得があること
- 勤労の合計所得額が75万円以下であること
- 勤労以外の所得が10万円以下であること
- 特定の学校に在学していること
「勤労による所得」とは、アルバイトや業務委託契約（家庭教師など）、あるいは個人事業として得た収入を指します。「勤労以外の所得」とは、株式の譲渡益や配当、家賃収入などが該当します。これらの要件をすべて満たすことが前提です。
特に、学校教育法に基づく学校に通っていることという要件については、専門学校や通信教育は対象外となる場合がありますので、慎重に確認してください。
勤労学生控除を利用するメリット・デメリット
この制度を活用することで、税負担の軽減が期待できますが、メリットとデメリットを理解した上で利用することが重要です。以下で詳しく説明します。
メリット
勤労学生控除を利用する最大のメリットは、所得税や住民税の減額です。例えば、年間給与が130万円以下の場合、基礎控除（48万円）と給与所得控除（55万円）、さらに勤労学生控除（27万円）を差し引くことで、課税所得が0円となり、所得税は完全に免除される場合もあります。
- 所得税減額の例
- 勤労学生控除：27万円
- 基礎控除：48万円
- 給与所得控除：55万円
これらを差し引いた結果、130万円以下の給与収入の場合は、納税義務が発生しない可能性が高くなります。つまり、学生は所得税を支払うことなく、生活を支える手取り額が増えることになります。
さらに、住民税にも26万円の控除が適用されるため、地方税（住民税）も減額されます。ただし、住民税の納税額は自治体によって異なる場合があるため、管轄の市役所や区役所で詳細を確認することをお勧めします
デメリット
一方で、勤労学生控除を利用することで、扶養控除の適用が受けられなくなる可能性がある点には注意が必要です。学生の年間収入が増加すると、扶養控除の対象から外れる場合があります。特に、学生の年収が103万円を超えると、両親や配偶者の扶養控除が受けられなくなり、その結果、扶養者の税額が増加することになります。
扶養控除額の例
- 16歳以上18歳以下：38万円
- 19歳以上23歳未満：63万円
したがって、学生自身が収入を得て扶養控除の対象から外れる場合、家族全体の税負担が増える可能性があるため、収入が増加した場合は事前に家族と相談してから申請を行うことが推奨されます。
勤労学生控除の計算方法
勤労学生控除は、所得税の課税所得を減らすための控除額として適用されます。具体的な計算方法は以下の通りです。
所得税の計算方法
所得税の計算は、次の式に基づきます：
「1年間の収入 − 経費 − 所得控除額 ＝ 課税所得」
勤労学生控除は、この課税所得を計算する際に控除額として差し引かれます。所得税における勤労学生控除額は、27万円です。この控除額を収入から引くことによって、支払う所得税を軽減できます。
なお、所得税の税率は収入額に応じて異なるため、国税庁のWebサイトで最新の税率を確認することが重要です。
参考：所得税の税率（https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm）
住民税の計算方法
住民税には所得割と均等割があり、両者を合算して住民税を計算します。以下はその計算方法です。
所得割の計算
住民税の所得割は、課税所得額に対して**10％**の税率を適用します。これはすべての自治体で共通の計算方法ですが、実際の住民税額は自治体ごとに異なる場合があります。
均等割の計算
均等割は、住民税のもう一つの要素で、住民税の計算において重要な役割を果たします。東京都の場合、均等割の金額は5,000円（内訳：道府県民税1,500円、市町村民税3,500円）です。
住民税の計算には、所得割と均等割の両方を合計する必要があります。勤労学生控除を申請することで、課税所得が減り、住民税額が軽減されます。年末調整や確定申告によって、住民税の金額は自動的に計算されます。
勤労学生控除の手続き方法
勤労学生控除を利用するには、年末調整または確定申告で申請を行う必要があります。どちらの方法も簡単に手続きを行えますが、手続きのタイミングや書類準備についての理解が重要です。
年末調整での申請方法
年末調整を受ける場合、給与所得者は「扶養控除等（異動）申告書」に必要事項を記入し、勤労学生控除を申請します。この申告書は、職場で受け取るか、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。
参考：給与所得者の扶養控除等（異動）申告書（国税庁のWebサイト）
必要事項
申告書に記入すべき主な項目は次の通りです：
- 氏名
- マイナンバー
- 住所
- 生年月日
- 世帯主名と自分との関係
- 配偶者の有無
- 収入の種類と見込額
- 学校情報
また、「勤労学生」の項目にチェックを入れ、必要書類（在学証明書や学生証の控え）を職場に提出します。
確定申告での申請方法
確定申告を行う場合は、確定申告書に記入するほか、e-Taxを使った電子申告も可能です。e-Taxを利用することで、手続きがスムーズに行えます。
参考：確定申告書等作成コーナー（国税庁の確定申告作成コーナー）
必要書類
確定申告に必要な書類は次の通りです：
- 源泉徴収票
- 控除証明書
- 所得証明書
- 経費証明書
申告書の作成後、必要情報を入力し、**「勤労学生」**にチェックを入れることで、控除を適用できます。最終的に、納税額や還付金額が自動的に計算されます。
勤労学生控除利用時の注意点
勤労学生控除を申請する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解して、手続きをスムーズに進めましょう。
学校に在学証明書を発行してもらう必要がある
勤労学生控除を申請するためには、学校から在学証明書を取得する必要があります。年末調整や確定申告の申請期限に間に合うよう、早めに証明書を準備しましょう。
また、学校の規則によりアルバイトが禁止されている場合もあります。アルバイトを始める前に、学校の規則を必ず確認してください。
所得税と住民税では控除額が異なる
所得税と住民税では、勤労学生控除の額が異なります。所得税は27万円、住民税は26万円です。これに加えて、基礎控除や扶養控除、配偶者控除などの金額も税法に基づいて異なります。
また、所得が増えると、所得税が非課税でも住民税の支払いが発生する場合があります。注意が必要です。
学生納付特例制度を受けている場合
学生納付特例制度を利用している場合、国民年金保険料の納付を先送りできる特典があります。この制度を利用することで、社会人になってから保険料を追納できます。
この制度は、所得が一定額以下の学生に適用され、勤労学生控除との併用が可能です。ただし、1年間の所得が増えると、学生納付特例制度の対象外となることがあるので、収入状況に応じて注意が必要です。
勤労学生控除を利用する際は家族と相談しよう
勤労学生控除を申請することによって、家族の税負担に影響を与える可能性があります。特に扶養控除から外れることで家族全体の税金が増える可能性があるため、事前に家族としっかり相談してから申請することをお勧めします。
このように、勤労学生控除を上手に活用すれば、税負担を大きく軽減することができます。申告方法や要件に関して不安がある場合は、税理士に相談することも一つの方法です。
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